Friday, June 23, 2006

 

海外ゲストの報告=脱WTO六月行動報告・その4=

 六月行動で私たちはタイ、フィリピン、韓国で、幅広い領域でさまざまな分野の人々、組織をネットワークしてグローバリゼーションに対峙して運動している運動体からゲストスピーカーを招きました。それぞれの国でいま暮らしと動労の現場で何が起こっているか、そのなかで人々はどのような運動に取り組んでいるか、事前に出していただいただいた三人のゲストスピーカーの提起を紹介します。


タイにおけるFTAの動向とその影響
       キンコン・ナリンタラク(タイFTAウォッチ・Thai Action on Globalisation : TAG)

◆タクシン政府およびFTA
 現在のタイ政府は、建築、アグリビジネスおよびテレコミュニケーションといった産業に後ろ盾された政府です。彼らは、投資および金融部門の開放により起こった97年の経済危機を忘れたかのように、国際貿易と投資の推進による経済開発をますます推進しています。それと共に自由貿易協定(FTA)の交渉が進められていますが、FTAとは、二国間であろうと多国間であろうと、“発展途上国”の貿易交渉力を弱めるものに他なりません。

◆タイFTA交渉例:中国との場合
 中国はアセアン(ASEAN)加盟国ではないものの、タイ・中国のFTAは、1993年以来設立されたアセアン自由貿易圏(AFTA)の一部として、交渉が進められています。

 2003年に始められた自由化交渉は2004年に終了し、2005年には圏内関税縮小が開始され、2010年にはアセアン6カ国(タイ、フィリピン、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ブルネイ)と中国の関税縮小が、2015年には新アセアン4カ国(カンボジア、ラオス、ビルマおよびベトナム)の関税縮小が達成される予定です。また、それとは別に、前倒し実施(アーリーハーベスト)と呼ばれる枠組みのもと、生物、肉、乳製品、動物製品、樹木、野菜および果物などの品目は、2004年1月1日から関税縮小が開始され、2006年以内には関税ゼロにまで引き下げられる予定です。

 しかしながら、タクシン首相率いるタイ政府は、アセアン自由貿易圏(AFTA)交渉下での、タイ・中FTA交渉では時間がかかるとみなし、2003年2月の中国訪問での朱鎔基首相との会見以来、中国との二国間交渉を公式に開始しました。その結果、 アーリーハーベストのリスト中、例えば果物および野菜は、2003年10月1日以降、貿易関税をゼロとすることが決められました。

◆タイ小規模農家の崩壊
 タイ農業経済オフィスによると、中国からの野菜・果物輸入自由化の9か月後には、その輸入量は180%増加しました。タイへ輸入される主な野菜はニンニク、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいもで、他方、輸出品の90%はタピオカですが、輸入価格が輸出価格をはるかに凌いでいます。

 果物に関しても、タイの主な輸入品はりんご、西洋ナシ、ブドウ、オレンジなどで、主な輸出品は乾燥ロンガン(竜眼)、新鮮なロンガン、ドリアンおよびザボンなどですが、輸出が78%の成長に過ぎないのに対し、輸入が伸びて、これもタイの142%の赤字です。中国から輸入された野菜や果物は、タイ産の平均3分の1ほどの価格なので、中国産の商品がタイの市場に浸透するのも当然です。

 2003年10月1日の貿易自由化施行直後に、タイの農業・協同組合省は、中国から圧倒的安価な農産物が市場に流入したことを理由に、ニンニク、赤玉ねぎ(シャロット)、および玉ねぎの作付面積を縮小する計画を発表しました。農業経済オフィスによれば、中国との市場自由化前は、平均25.64バーツ/kgだった乾燥ニンニクの価格が、自由化後は18.35バーツ/kgに落ち、2004年には15-16バーツ/kgに低下しました(1バーツ約3円)。 

 タイのニンニクの作付面積はかつて2万8千ヘクタールありましたが、自由化が始まった後、農業・協同組合省による補助金制度もあって、8千ヘクタールに減少しました。補助金として、農民は、ニンニクの代わりに多年生樹木を植えれば1ライ(0.16ヘクタール)につき2千バーツ(約6千円)が支払われ、他の野菜に替えれば1ライにつき500バーツ(約1500円)だけが支払われるとされました。

 低価格で生活苦のニンニク農家は、2005年、政府に対し、乾燥ニンニクの価格として1キロ30バーツを保証するように請願しました。それに応じて、通商省は県の通商担当に対し、要求価格を保証するようにとの通達を出しましたが、しかし実際は、2005年は18バーツだけを保証され、残りの12バーツは次年度にニンニク及び他の作物(赤玉ねぎ、玉ねぎ、レイシ、ロンガン、タンジェリン)の作付けを放棄したものに対し支払われるとされました。これでは、農民には将来はありません。

 果物に関しても、価格は低迷を続け、果物生産者の状況は今もますます悪くなっています。タイ政府は、国内で果物の消費促進キャンペーンなどを行っていますが、その一方で、市場原理の問題に取り組まず、少数の輸出業者による果物市場の独占を容認しています。要するに、タイ政府は、工業とサービスセクターがFTAから利益を得るために、小規模農民を犠牲にしたのです。

◆オーストラリアからの乳製品の輸入
 タイのオーストラリアからの乳製品の輸入は、全乳製品輸入合計の60%を占めます(約100億バーツ/年)。タイでは、約15万人の酪農業者がいるとされていますが、しかしこの自由化の流れの中で、彼らの生活もまた苦しくなっています。

 約40年前に設立された酪農協同組合はタイで最も強力な協同組合です。1日約10時間は働かなければならないとはいえ、酪農家は生活に十分なお金を稼いでいます。なぜなら、それは国王陛下の意向によって独立独行の精神のもとに設立された組合だからです。しかしFTAによって、そうした組合が壊滅の危機にさらされています。牛乳の国内需要が1日4,000トンなのに対し、国内供給量は1日2,100トンです。タイの生乳の生産コストはアメリカ、デンマーク、オランダ(10-14バーツ/kg)とは競争できますが、オーストラリアとニュージーランドの生産原価は低く(6-7バーツ/kg)太刀打ちできません。EUやアメリカは農業補助政策を設けていますが、タイ政府は反対のことをしています。

 国内で飼育されている約40万頭の乳牛への影響に加えて、FTA合意はさらに約5~600万頭の肉牛にも影響を及ぼすでしょう。タイではほとんどの農民は補助的収入として、また、土を有機的に肥沃にするためにも牛を育てています。しかし、オーストラリアからの安い肉牛の流入により、タイの持続可能な農業が破壊されようとしています。

◆小規模農家への影響のまとめ
 FTA推進の理由として、タイ政府は、繊維産業やその他の特定の産業に加えて、農産物市場の拡大によって農業にも利益を与えるだろうと主張しています。しかし、中国との貿易自由化後、タイ国内市場では明らかに問題が起こっています。酪農家や牛肉飼育農家の問題が、政府の主張と現実とはギャップがあることを証明しています。FTAによりタイがより大きな農産物市場を確保したのは本当かも知れませんが、それから実際に利益を得るのが誰なのかという疑問が残ります。

 農産物輸出の最大の問題は関税障壁ではなく、衛生および健康基準による障壁です。タイがFTA交渉を進めている日本、オーストラリアおよびアメリカなどの先進国は、輸入関税は最高5%と既に低い値です。これらの国のポイントは、衛生や健康基準、また環境基準が高いことです。タイでは既に禁止されたある種の農薬をまだ使用している中国でさえ、農産物の輸入時に、化学肥料の残留に関して非常に高い基準を課しており、タイの小規模農家にとっては対応が難しいのが現実です。

 タイ・オーストラリアFTA協定に関連して、協定成立直後に、オーストラリアのクィーンズランド州とタイの多国籍アグリビジネスCPグループとの間で、果物パッケージングの技術協定が交わされました。CPのCEO兼常務取締役によれば、ザボン、マンゴスチン、ドリアン、ロンガン、レイシおよびタマリンドなどの果物のオーストラリアへの輸出は、(韓国、香港、フィリピンおよびEUなどの国々への輸出もあって)今後ますます成長するだろうし、クィーンズランドの主な輸入業者であるカーター・スペンサーと、作物プランテーションの基礎技術向上と研究のために協力していくつもりだそうです。

 自由貿易協定締結後、中国への輸出増加が期待されていたロンガンは、果物への関税撤廃後も、その低迷する価格が回復する気配はなく、農民への利益は何もありません。それどころか、国内産業システムの慢性の腐敗と、中国における予想を超える市場規制のために価格は落ちるばかりです。さらには、かつては農民からロンガンを購入していた小規模の地元仲介業者が少数の大規模中国商人によって追い出されています。それらの中国商人は、タイ国内でロンガンの価格を押し下げて、且つ0%の関税で、彼ら独自の流通経路によって自国に売っています。政府が、タイ国内でのロンガン消費促進キャンペーンをどれだけ行おうと、小規模生産者の生計が改善することは無いでしょう。

 最後に、タイの二大製品である鶏およびエビをみてみると、それは日本で確かに販売拡大の可能性があり、また、米国にも巨大市場の可能性があります。しかしこれらの輸出から最も利益を得るのは誰か、想像するに困難ではありません。タイの農業および小規模農民の将来はどうなるのでしょうか? もちろん、私たちは、まだ輸出のために生産することができるでしょう。しかし、作物の生産は大企業あるいは契約農業によってコントロールされ、小規模農民が生き残る道は無いでしょう。



ポリシー・スペースをめぐるたたかい
  ―新しい貿易の取り決めは、フィリピンの開発の選択肢をどう狭めるのか
                ジョセフ・プルガナン(フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス)

 世界貿易機関(WTO)で新たに始まった複数国間の貿易協定交渉は、開発と国際貿易から生じる利益のより公正な分配を約束して、2001年にドーハで始まった。ドーハ宣言によれば、(その交渉は)「(開発途上国の)ニーズと利害を作業プログラムの中心に据える。そして開発途上国、とりわけ後発開発途上国が、その経済発展のニーズに応じて世界貿易の成長の分け前を得られるよう、建設的な努力を続ける」 としていた。

 しかし構成国がいわゆる開発ラウンドの幕引きに向けて動き出すにつれて、フィリピンのような貧しい国のための交渉議題が進められる可能性はなくなっていった。その交渉は開発の条件を整備して繁栄をもたらす代わりに、ポリシー・スペースをめぐるたえざる争いの場になった〔訳注-ポリシー・スペースとは、ある国家が自国の政策(関税率など)を自国で決定できる裁量の幅のこと〕。途上国は自らの開発目標の遂行のために国策を使用する権利を守ろうとしている。

 フィリピンは、よい実例である。貿易交渉に関して言えば、フィリピンは戦術を用いる余地のほとんどない開発途上国である。私たちはほぼ20年間、実質的な関税率の引き下げになる一連のプログラムを実行してきた。そしてフィリピンは、WTOのもとで、あるいは二国間で、自由貿易協定(FTA)を交渉し続け、関税を減らして経済をさらに自由化することをめざしている。

 WTO交渉における現在の提案は、農業、水産業を含む他の工業部門、さらにサービスのポリシー・スペースを実質的に侵食するであろう。新しい妥協は、拘束関税率と適用関税率をさらに減らし、工業製品の関税による拘束をさらに強め、国内でのサービスに対する規制を弱めるであろう。

 合衆国とEUのような貿易超大国から出された交渉議題は、複数の戦線でポリシー・スペースに攻撃をしかけている。開発途上国は、それに対抗する提案を考え出し、ポリシー・スペースの侵食の効果を緩和する予防措置を講じてきた。

 その交渉でのフィリピンの防衛的な態度は、最近フィリピンが参加することになったグループとこのグループから出された提案に明らかである。

 農業では、フィリピンは開発途上国のG33の主要メンバーである。このグループは特別産品と特別セーフガード措置(SP/SSM)の規定を推し進めている。

 NAMA(非農産品市場アクセス)では、開発途上国の柔軟性が戦線になっている。香港閣僚会議の前に、11の開発途上国からなるグループは、柔軟性を独立の規定として扱い、フォーミュラの議論から切り離すことを求めた。フィリピンはこのグループの一翼を担っている。

 サービスでは、国内の規制に関する議論は、自由化の強力な推進を和らげている。一方では、外国サービス業者の国内市場への参入をうながすための規制緩和の諸要求があり、他方では、サービスの自由化を規制するための各国の権利がある。その議論は、この二つの議題をうまく両立させることをめざしている。最近のブラジルとフィリピンによる提案は、開発途上国が新しい規制を導入して、自国の目標を達成する権利を持っていることを再度強調した。

その取り決めに価値はあるのか?

 構成国は農業とNAMAのモダリティに関する重要な期限である4月30日を守っていない。その期限が破られたことで、二種類の反応が生まれた。一般的に開発途上国は、不公平な取り決めの影響を再調査し、「開発」が交渉の軸であるべきとあらためて主張している。これによって、議論をさらに広げるチャンスを生かそうとしている。他方で、自由化攻勢で得をする諸国は、期限が守られなかったことを、交渉強化の合図と見ている。そして香港で達した合意からのさらなる「後退」を警戒している。

 新たな期限に向けて、交渉は進められている。しかしながら、このいわゆる開発ラウンドなるものは、本当に推進する価値があるのかという疑問は残されたままである。

 ドーハ・ラウンドから得られる利益と言われているものは、見積もり通りには実現しないかもしれない。最近のカネギーの研究の結論では、ドーハのシナリオがすべて実現したとしても、地球全体の収入は600億ドルに満たない。すなわちそれは、現在の地球全体の国内総生産(GDP)のわずか0.146%(1%の約七分の一)である。個々人の経済にもたらされる利益も小さく、実収入が1%を超えて上昇する のは中国のみである。加えて、その研究はこう結論づけている。「各国が貿易政策を変更するときに課される調整コストは、以前よりも不気味に立ちはだかっている」。

調整コスト

 1995年のWTO結成以降に実施された貿易政策の変更は、途上国が懸念する少なくとも二つの主要な領域に損失をもたらしてきた。一つは収入の効果である。経済協力開発機構(OECD)の研究が報告するところでは、開発途上国は現在、1560億ドルの関税収入を得ている。国連貿易開発会議(UNCTAD)による予測によれば、この関税収入の基盤は、非農産品の関税が「スイス・フォーミュラ」のもとで削減される「野心的な」シナリオにおいては、41%まで下降するだろう。

 加えてその研究の指摘によれば、低開発段階にある諸国は、自国のマクロ経済の安定を維持し(そのなかでも重要なのは、持続可能な財政である)、収入の減少が貧困削減、再分配、開発能力に及ぼす逆効果と対決している。

 もう一つの懸念される領域とは、雇用の喪失である。東南アジアでは、NAMAに関する野心的な取り決めに伴う雇用の喪失は、非鉄金属(6.4%)、その他の工業製品(2.3%)、自動車(6.6%)、電気(1.7%)になると推測されている。

ドーハを疑う

 ドーハ・ラウンドの楽観と開発の展望は、ゆっくりと疑いに取って代わられた。交渉の主要な領域のすべてで、開発の目標はさらなる自由化のための野心的な議題に席を譲ったように思われる。
 
 ポリシー・スペースをめぐる議論が、開発についての議題の中心をなす。一方で開発途上国は、「開発ラウンド」の幕引きをすすめている。他方で、この交渉での防衛的な姿勢は、途上国が自らの開発の選択肢を拘束にかけ、自国経済に大きな犠牲を強いる取り決めに批判的であることを示している。

 フィリピンのような開発途上国が、ドーハ・ラウンドの野心的な議題を撃退し、制限されたポリシー・スペースを守り、自ら開発の議題を要求することは、どれだけできるか。次の数ヶ月は、リトマス紙になるであろう。

 

【社会運動にとってのチャンスか? 多国籍企業にとってのチャンスか?】
 報告:ビョン・ジョンビル(韓米FTA阻止汎国民運動本部)


☆ はじめに 

 2006年2月3日、韓国政府は突如として、アメリカとのFTA交渉を開始すると表明した。前USTR(米国通商代表部)のロブ・ポートマンは、韓米FTAの開始を歓迎して、次のように述べている。「今回の交渉は、この15年間すすめられてきた自由貿易交渉のなかで、最も重要な交渉となるだろう」と。この言葉は、財界からの広い支持によって裏打ちされている。韓米FTAはNAFTAと同じように、多国籍企業の利益を最大化する一方で、民衆の権利や生活を犠牲にする。

☆ いわゆる4つの事前交渉

 FTA交渉に先だち、韓国政府はアメリカに自らの「真剣さ」をアピールすべく、事前に4つの新自由主義的アジェンダを遂行しなくてはならなかった。

1)2005年10月に、医薬品の価格にたいする規制を緩和すること。
2)2005年11月に、アメリカの輸入車にたいする排ガス規制を削減すること。
3)2006年2月に、アメリカ牛の輸入を再開すること。
4)スクリーン・クウォーター制度の規制を緩和すること。

 これらは、韓米FTAがもたらす破壊的な結果を端的に物語っている。

☆ 暴露された韓国草案

 私たちは韓米FTAがNAFTAと同じように、民衆に悲惨な結果をもたらすのではないかと危惧している。韓国政府はFTAによって雇用が生みだされ、貧富の差が縮まるだろうと公言している(これもNAFTAと同じ主張だ)。しかしながら、アメリカ政府がFTAで要求しているのは、韓国の市場を100%解放させることにすぎない。

 私たちはFTAのことを「農民にたいするテロ行為(Farmer Terror Action)」と呼んでいる。なぜなら、FTAは韓国の最も重要な農産物である、米農家の保護を撤廃させるからである。アメリカ側のリーダーであるリチャード・クロウダーは、「FTAは例外を認めない」と述べている。アメリカ側の統計によると、FTA締結後、韓国の農業生産は、現在の45%まで減少する。このことは、韓国農民の半数が職を失い、都市貧困層となることを意味している。

 また、韓米FTAは韓国の公共サービスを商業化し、私有化することにつながるだろう。1998年に韓米投資条約(BIT)交渉が行われたさい、アメリカ政府は韓国政府にたいして、公共部門(5つの例外を除く)における「外国資本への規制」を撤廃するよう要求した。この交渉は韓米FTAに引き継がれている。現在、そのターゲットとしてガスがねらわれていることは周知のとおりである。

 もう一つ、FTAでターゲットとされているのが、医療の価格制度である。とくにアメリカの医薬品業界がもとめる価格制度が設定されることになる。

 また、文化の多様性も危機にさらされる。FTAは韓国市場をハリウッドや巨大放送資本に譲りわたすことになるだろう。

 FTAは民衆の利益ではなく、両国の多国籍企業の利益となるものである。というのも、FTAとは新自由主義的な政策を強化するものだからである。5月15日に発表された韓国のFTA草案は、このことをよく示している。その内容は、NAFTAとほとんど同じである。そこには、外国投資家のために政府の政策や決定をむしばみ、政府や民衆の権利を浸食するような内容がふくまれている。

☆ 東アジアにおいて、アメリカのヘゲモニーを強化するFTA

 もう一つ、論点を追加しておきたい。韓国政府は2006年1月にアメリカ軍の「戦略的柔軟性」を受けいれた。FTAをつうじて、両国間の軍事同盟はさらに強力なものとなるだろう。そして、このことはアメリカの「対テロ先制」ドクトリンを正当化することになるだろう。

☆ 社会運動にとってのチャンスか? 多国籍企業にとってのチャンスか?

 しかしながら、韓米FTAに向けた政府の動きは、韓国の民衆や社会運動にも新しいチャンスをあたえている。「韓米FTAに反対する韓国国民連合」という名のもとに、14以上の共同委員会(およそ300団体)が集結し、韓米FTAをストップさせるための共同行動を行っている。闘争をつうじて、これらの運動はFTAをストップさせるための経験や戦略を共有できている。そして、FTAばかりでなく新自由主義グローバル化をも超克できるようになる。FTAは社会運動にとってのチャンスなのか、それとも多国籍企業にとってのチャンスなのか?韓国民衆と社会運動は、その答えをださなくてはならない。

 

世界経済フォーラム東アジア会議に申し入れ=脱WTO六月行動報告・その3=

世界経済フォーラム(WEF)東アジア会議への共同申し入れ(申し入れ書は最後に)

 6月15日午後、私たちはWEF会議が開催されている東京プリンスホテルに行き、WEF事務局に共同申入書を提出した。事務局との面談を許可されたのは4名であった。海外ゲストのジョセフさん(フィリピン/フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス)、ジョンピルさん(韓国/韓米FTA阻止汎国民運動本部)、6・17シンポジウム事務局2名(大野和興、秋本陽子)である。WEF事務局からは、ジュネーブから派遣されてきたWEF本部事務局の2名の他に、日本人の通訳1名、そして全く自らを自己紹介しなかった男性1名であった。

 まず大野がNGOが提出する申入書の趣旨を説明し、私たちは競争原理を推進するグローバリゼーションに反対することを伝えた。すると、WEFのコミュニケーション担当のマーク・アダムス氏は「WEFはNGOである。オクスファム、地球の友、ユニセフなどと一緒にやっているし、世界社会フォーラムとも協力していきたい。私たちも貧困を作り出すようなグローバル化には反対する」と答えた。

秋本は「市場原理主義の中で、世界規模で持てる者と持たざる者の格差が拡大している。WEF会議には私たちの声が反映されない」と述べた。またジョセフは「WEFは一部のエリートのみが集まって討論をしている。WTO/FTAなど、自由貿易推進の圧力によって、フィリピンをはじめ途上国は貧困に喘いでいる」と論じた。私たちの主張を一通り聞いた後で、最後にマーク氏は「貴重な意見をありがとう」と言い、「この申入書は必ず参加者全員に伝えます。約束します(I promise)」と語った。
 この面談は約15分程度であったが、ホテル正面とロビーに約50人の私服警官が私たちの回りを取り囲み、挙句の果てに、うち2名は私たちが地下鉄に乗るまでついてきた。
(秋本記)


2006年6月15日
世界経済フォーラム東アジア会議議長 殿

世界経済フォーラム東アジア会議に提案します

 いま東アジアでは、WTO(世界貿易機関)が推進するドーハ・ラウンドや二国間・地域レベルのFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)の推進をてこに、自由貿易地域を作り、さらにその先に東アジア共同体を構想しようとする動きが、政府、経済界で強まっています。こうした動きの背後には、東アジア地域が巨大市場として成長し、経済のつながりが急速に深まっている現実があります。

 2006年6月15・16日、東京で、「アジアの統合に向けた新しい枠組みの構築」(Creating a New Agenda for Asian Integration)をテーマに掲げ、世界経済フォーラム(WEF)東アジア会議が開催されます。「アジアの統合」を正面から掲げたこの会議は、東アジアにおける自由貿易・経済連携の動きをいっそう促進させることになるでしょう。

 しかし、そうした現実の背後に“もうひとつの現実”が存在していることを指摘しなければなりません。貿易や投資、サービスの自由化が生む激烈な市場競争のなかで生存基盤を失っていく生活者・小生産者の存在です。アジアの圧倒的多数の人々は、この現実のもとで生活しているのです。

 日本ではそれは、階層社会の激化という形で現れています。また農林漁業の解体による地域経済の衰退や輸入に頼る食料がもたらす食の危険性の増大ども指摘できます。アジア全体に目を向ければ問題はさらに深刻です。土地・水などの地域の自然資源が外資を含む企業に民営化されたため、生産と生活の手段を失う農漁民が各国で増えています。土地と水をめぐる紛争はアジア各地で増加しているのです。関税引き下げと投資の自由化によってせっかく育ってきた地域の産業が衰退、代わって進出してきた外資系企業はその地域に根ざすのではなく安い労働力を求めて移動を繰り返す、といった事態も見られます。経済の発展が喧伝される一方で、社会が不安定化しているのです。いまアジア各地で政治不安が高まっていますが、その背景にあるのはこうした現実です。

 さらに“もうひとつの現実”があります。アジアの社会的・政治的不安定化を口実に、各地で対テロ戦争を引き起こし、世界の不安に陥れている米軍が、アジアでもその動きを強めています。在日米軍・在韓米軍の再編はその一環であり、日本の自衛隊も米軍と一体となって、アジアでの存在感を強めようとしており、かつて日本の侵略戦争に苦しんだアジアの国々、人々の間に危惧の念が広がっています。それはアジアにおける軍拡競争と軍事的危機を高めずにはおられません。「アジアの統合」はこうした政治的・軍事的動きと密接にリンクしながら進められています。そこで生まれるのは共生と和解ではなく、相互不信と対立でしかないでしょう。

 現在進められようとしている東アジアの統合に向けての自由貿易の推進は、こうしたアジアに住む人々の暮らしを不安に陥れる“もうひとつに現実”をいっそう拡大・深化させるでしょう。私たち、アジアで活動するNGO、都市生活者、労働者、農漁民のグループは、大企業主導の「アジアの統合」に異議を申し立てます。今回開かれるWEF東アジア会議においては、経済発展や市場の拡大といった視点からだけではなく、そのことがもたらす社会のもうひとつの現実にも目を向け、人々が安心して暮らせるアジアに向けて討議を深められることを提案します。

以上、申し入れます。


【申し入れ団体】

《日本》
アジア太平洋資料センター (Pacific Asia Resource Center)
フォーラム平和・人権・環境(Forum for Peace,Human Right and Environment)
全日本農民組合連合会 (All Japan Federaition of Farmers Union)
日本消費者連盟 Consumers Union of Japan
ATTAC-Japan
日本ネグロスキャンペーン委員会 (Japan Commitee for Negros Campaign)
ピープルズプラン研究所 (People's Plan Study Group)
アジア農民交流センター (Asian Farmers Exchange Center)
グローバリゼーションを問う広島ネットワーク (Globalization Watch Hiroshima)
自治体”農”ネット (:Agro-Extension Workers Network)
新潟百姓勝手連 (NIIGATA Farmers League in Japan)
置賜百姓交流会 (OMITAMA Farmers League in Japan)
債務と貧困を考えるジュビリー九州: (Jubilee Kyushu on World Debt and Poverty)
脱WTO草の根キャンペーン実行委員会 (No to WTO-Voices of the Grassroots in Japan)
異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーン (Campaign against Japan-Korea FTA)

《海外》
National Confederation of Officers Associations India
LOKOJ INSTITUTE, Dhaka, Bangladesh
reseau national DETTE ET DEVELOPPEMENT-Niger
World Forum of Fisher Peoples (WFFP)
PAPDA - Haiti / Jubileo Sur Haiti
Media Culture Actions against Neoliberal Globalization (in s.Korea)
Community Development Library (CDL), Bangladesh
Economic Justice and Development Organization (EJAD), Pakistan
National Fisheries Solidarity Movement of Sri Lanka
Alliance forProtection of National Resources & Human Roghts[ANRHR]-Sri Lanka
IGTN(International Gender and Trade Network)-Asia
DAWN(Development Alternatives with Women for a New Era) Southeast Asia
Thai Labour Campaign
Europe solidaire sans frontieres (ESSF), France
SEWA NEPAL
IMSE, India
FIAN India
African Forum on Alternatives, Dakar (Senegal)
Attac Jersey
Focus on the Global South
Chirumanzu, Zimbabwe
Creed Alliance, Pakistan
Dennis Brutus, University of Kuwazulu-Natal, Durban/South Africa
Asia Pacific Forum on Women, Law and Development (APWLD), Chiang Mai, Thailand
Thanal, Kerala, India
Centre for Human Rights and Development, Ulaanbatar, Mongolia
People's Agriculture Plan toward 21st Century, Negros, Philippines
Alter Trade Foundation Inc. Negros, Philippines
FTA-Watch Thailand
Fisher Folk Movement, Philippines
Convergence- Philippines
Stop the New Round Coalition, Philippines
Thai Action on Globalization
Local Action Links, Thailand
Globalisation Monitor ,HongKong
CADTM (committee for the abolition of third world debt)


We Oppose "Asian Integration" for Big Business

June 15, 2006

To: Co-chairs of World Economic Forum on East Asia

There have been many talks recently among governments and economic circles in East Asia about creating a single free trade region based on the development of the Doha Round negotiations of World Trade Organization (WTO) as well as FTAs (free trade agreement) /EPAs (economic partnership agreement) on bilateral or regional level. There are also talks about creating, eventually, an East Asia Community. In the background of these trends, the East Asia region is dramatically developing as a huge market and economic links within the region are getting closer.

World Economic Forum on East Asia is going to be held from June 15th to 16th in Tokyo on the theme of "Creating a New Agenda for Asian Integration". As the theme indicates, this forum will seek to further promote free trade and economic partnership in the region.

However, we have to notice "another reality" which exists behind this development - the reality of the people whose base for subsistence has been undermined in the uncontrolled market competition in the wake of "free trade and investment" and "deregulation on services". The overwhelming majority of the people in Asia are faced with this reality in their daily life.

Even in Japan, this reality is shown in the drastic increase of the disparity among social classes/layers. It is also shown in the collapse of local economy because of the decline of agriculture/forestry/fishery and the increase of the risks in stable supply of food because of the extraordinarily heavy dependence on imported food. The situation in other Asian countries is more serious. In many countries, land, water and other natural resources, which has been common properties of local people, was privatized and sold out to private companies, including foreign companies, causing increasing number of farmers and fishers to lose their means of production and living. As the result, disputes on land or water are increasing in the whole region. Tariff reduction and deregulation on investment led to the decline of local industry which developed through hard efforts. Instead of contributing to the development of local economy, foreign companies which replaced local companies often shifts their operation to other countries in order to utilize cheap labor. While there have been a series of reports about the economic development of the region, people are living in more and more unstable society. This reality lies behind the political upheaval developing in many countries in the region.

We still have an additional "another reality" to notice. U.S. military forces, which have been promoting and threatening military activities in many parts of the world in the name of "war against terrorism", are utilizing the social and political uneasiness in Asia to extend their operations in the region. The reorganization of U.S. troops in Japan and Korea is a part of this shift. The increasing presence of Japan's SDFs (Self Defense Forces) in Asia, which are now an integral part of the military strategy of the U.S., is responded by increasing concern among people in other Asian countries who have the past experience of Japan's invasion. Such a shift will only increase arms race and danger of war in the region. "Asian Integration" is, in fact, promoted in close relation with these political and military intensions. Such integration will result in mutual mistrust and confrontation instead of harmonious coexistence and reconciliation.

We worry that the ongoing process of promotion of free trade and integration of East Asia will worsen the "another reality" and further endanger the living condition of the people in Asia. We, representing NGOs, citizens' groups, and organization of workers, farmers and fishers in Asia, oppose "Asian Integration" initiated by big companies. We think that the World Economic Forum on East Asia should not discuss the future of Asia solely from the perspective of economic development and extension of market but look at the "another reality" of the society brought about by such a development. It should discuss on the future of Asia in which people can live at peace.

 

アジアの人々の共同の運動を!=脱WTO 6月行動報告その2“6・17シンポ”=

 6月17日、東京都の文京区民センターにて、「大企業と大国に異議あり!人々のアジアを足元からつくる6・17シンポジウム」が開かれた。シンポジウムには、韓国、タイ、フィリピンからゲストが招かれ、アジア各国の立場から、WTO・FTAの推進する企業主導のグローバル化に異議がとなえられた。参加者はおよそ60名。会場には、同日おこなわれた「米軍再編反対・東北アジアに平和を!6・17行動」のメンバーも駆けつけ、連帯のあいさつが交わされた。

▼ ゲストの報告

1)ジョセフ・ブルガナンさん(フィリピン)
 ジョセフさん(ストップ・ザ・ニューコアリッション)からは、WTOによってもたらされる途上国の影響について報告があった。たとえば、「スイス・フォーミュラ」とよばれる関税引下げ方式は、途上国の非農産品の関税収入を現在の41%まで下落させる。ジョセフさんは、こうした関税収入の低下は、途上国の貧困削減、再配分、開発政策に悪影響をもたらすと述べた。

また、WTOの影響で、フィリピンは自国の政策を自国で決める選択の余地を狭めつつあるという。もともと、フィリピンには国内産業を保護するための法律、条例が数多く存在したが、それらは95年のWTO加盟後、自由貿易の障害になるとして次々と廃止されてしまったという。こうした現状を前にして、途上国はいま経済的にも政治的にも、WTO交渉に疑問をもちはじめている。「今後、フィリピンのような途上国が、どのような姿勢を取るのかが交渉のカギとなるだろう」と、ジョセフさんは述べていた。

2)キンコン・タリンタラックさん(タイ)
 キンコンさん(FTAウォッチ)からは、自由貿易体制のもとで、タイの小農民がどのような被害を被っているのかについて報告があった。現在、タイ政府は中国、オーストラリア、日本、ニュージーランドなどとFTA交渉をすすめ、輸出志向型の農業を奨励している。キンコンさんは、こうした政策がタイの小農民の生活を破壊していると述べた。たとえば、タイと中国はアーリーハーベスト(前倒し実施)として、すでに自由貿易を実施しているが、その結果、ニンニクなどは35%も価格が落ちたという。こうした貿易体制のもとでは、儲かるのは1、2の大企業だけで、小農民はいくら努力しても借金を増やすばかりである。キンコンさんは、このような企業主導のグローバル化に反対し、「公正な経済を築かなくてはならない」と報告した。

3)ピョン・ジョンピルさん(韓国)
 ピョンさん(韓米FTA阻止汎国民運動本部)からは、韓米FTAによって予測される韓国への影響について報告があった。ピョンさんは、韓米FTAが韓国農民を半減させること、ほとんど全ての公共サービス部門を民営化してしまうこと、投資のさらなる自由化を促進することを述べた。また、FTAと軍事の関係にもふれ、アメリカがFTAを結ぶのは軍事的に重要な拠点となる国々であることが指摘された。そして、こうした大きな権力に対抗するためには、「民衆サイドも共同戦略、共同行動を具体的に練り上げなくてはならない」との力強い提案がなされた。

▼ 会場との応答から

 報告後、会場からはゲストにたいして、日本との間で進められているFTAやEPAなどについての質問が投じられ、意見交換がなされた。とくに、看護士の移動の自由化については、ジョセフさんから「フィリピンでは看護士が大量に海外へ流出したため、深刻な医療低下になやまされている」との応答があり、同時に、今後はこうした特定のイシューについて、「密接な情報交換のメカニズムをつくり、共同のキャンペーンをはっていくことはできないか」という提案もなされた。この情報共有、共同行動の必要性については、ピョンさん、キンコンさんも同様の意見を述べており、最後に日本側からもアジア民衆の共同ネットワーク・行動をつくりあげようと発言があって、シンポジウムは幕を閉じた。(くりはら記)

Sunday, June 18, 2006

 

議員会館で議員懇談と記者会見=脱WTO6月行動報告その1=

 脱WTO草の根キャンペーンの呼びかけで実行委員会を作り、6月15日から17日にかけ、韓国、フィリピン、タイのグローバリゼーションに対抗する社会運動・NGOsのネットワーク組織から活動者を招聘、15日は国会議員との懇談と記者会見、東京でこの日から開かれたWEF(世界経済フォーラム)東アジア会議への申し入れ、日本の社会運動体・NGOsとのこれからの運動をめぐる戦略会議などを行いました。
 16日は各国のピョン・ジョンピルさんは新潟へ、タイのキンコン・ナリンタラックさんとフィリピンのジョセフ・ブルナガンさんは京都へ飛び、それぞれの地域で集会・シンポジウムを行いました。
 17日は午後いっぱいをかけ、東京でシンポジウムをもち、グローバル化のもとで、アジアの村や町、暮らしの現場で何が起こってるかが報告され、こうした状況を変えるためのアジアの人々の共同の運動をどうつくっていくかが話しあわれました。近く報告します。今日は稲垣さんの15日の報告を掲載します。

 その前に、今回の取り組みの趣旨とゲストの紹介です。

<今回の取り組みの趣旨>
①今年12月合意をめざして交渉を急いでいるWTO対抗運動の一環
②平行してアジアで急速に進んでいるFTAが日本を含みアジアの人々に何をもたらすかを共有し、アジアでの共同の運動づくりを考える。。
③WTOとFTAを促進することで東アジア(東北アジアと東南アジア)を自由貿易地域として、その先に東アジア共同体を構想する動きが企業や各国政府で急速に進んでいる。その影にグローバル化で苦しみ、生存条件を壊されている多く人々がいる。そのことを前提にした東アジア共同体の動きに『異議あり』をいう。
④具体的にはこの15.16日に東京で開かれた世界経済フォーラム東アジア会議に対抗するふーラムと、このシンポを位置づける。

<海外ゲスト>
ジョセフ・ブルナガンさん(フィリピン):フィリピンにおけるWTO/FTAに反対するネットワーク組織「Stop the New Round Coalition, Philippines」の活動者であり、アジアの声を代弁するNGO「Focus on the Global South」のスタッフ。

キンコン・ナリンタックさん(タイ):タイのグローバル化に反対する運動体のネットワーク「FTA Watch Thailand」の活動者であり、タイ北部農村で活動する「Thai Action on Globalization」のメンバー。
農業問題に詳しい。

ピョン・ジョンポル(韓国):いま韓国で大きな問題になっている韓米自由貿易協定(FTA)の国民的な反対運動組織「韓米FTA阻止汎国民運動本部」の政策スタッフ。非正規職労働者問題にも取り組む。

(以下、いながきさんの報告)
今日は、17日におこなわれる「東アジア共同体に異議あり!」シンポの参加ゲストが国会議員会館で報告を行い、同時に開催されている世界経済フォーラム・東アジア会議へ申し入れを行い、夜には日本の社会運動とのネットワークの交流について意見交換を行った、1日行動でした。
以下、15日の1日行動の不完全メモです。

▼議員会館での報告会

議員会館で行われた「自由貿易によるアジアの人々への影響に関する報告会」は、国会が明日で終わるとか、日銀総裁の村上ファンド問題についての予算委員会での答弁とかで、参加者はあまり多くありませんでしたが、ジョセフさん(フィリピン)、キンコンさん(タイ)、ジョンピルさん(韓国)の皆さんから、とても重要な報告がありました。詳細はすでにレポートとしてデータになっており17日の報告会などでも報告されると思いますので、そちらに譲ります。

▼フィリピン:途上国の微妙なスタンス

ジョセフさんは、WTOやFTA交渉の問題点をフィリピンを例に出して話しました。一方で市場開放を進めようという政策、一方で圧倒的に弱い立場で国際交渉に望まなければならないジレンマがある。フィリピンの主権が自由化交渉の中で狭められているということを訴えていました。看護士の送り出しについては、日本政府がそれを受入れても、日本とフィリピンの医療問題は長期的にみて解決することはない、フィリピンにおける医療スタッフの海外流出はフィリピンの保健衛生にとっても大きな影響がある、と訴えました。

▼タイ:同時刻にバンコク日本大使館へ申し入れ

キンコンさんは、市場開放が進むタイの小農民や零細企業などが、中国やオーストラリアからの大量で安い農産物などに大きな影響を受けていることを具体的な例をだして訴えました。しかしそうした悪影響を受ける人ばかりではなく、一握りの大企業は自由貿易で恩恵を受けており、そのような人々が貿易交渉に大きな影響を及ぼしている、ということを訴えていました。
ちょうど同じ時間に、バンコクの日本大使館に対してタイのFTAウォッチの仲間が不透明なタイー日本FTA交渉を中断することを訴えた小泉宛の申し入れを行っていることも紹介しました(その後、ぼくたちは首相官邸前をとおって-ひっそりと心の中で「自由貿易反対!小泉退陣!」をつぶやきながら-キンコンさんに首相官邸をしょうかいしたのですが)。

▼韓国:FTA推進は多国籍企業のため

ジョンピルさんは、韓国政府が突然宣言した韓米FTA交渉の開始に対して韓国の社会運動が総力で反対している状況を紹介してくれました。とりわけ大きな影響をうける農民(FTA締結後に韓国農民は45%まで減少する、など)のたたかいを紹介しました。また韓米FTA反対闘争でアメリカの労組や議員などと連携を作り出せたことも紹介されました。またFTAによってガスなどの公共サービスの民営化も狙われていることも紹介しました。資本の論理ですすめられるFTAは、多国籍企業の利益のためであるとも批判しました。

▼国鉄民営化解雇撤回の国会前座り込みに連帯のアピール

報告会を終了して、議員会館地下食堂で昼食をとったのち、国会前で座り込んでいる国鉄を不当解雇された複数の労働組合の座り込みを訪問しました。ちょうど一昨年ポルトアルグレのWSFに一緒に参加した国労の方がいたので話が弾み、ジョンピルさんが連帯の発言を行いました。韓国でも国鉄不当解雇問題でたたかう人々の話をしっており、この問題の解決はあらたな社会運動の前進につながる希望だ、と連帯発言を行いました。

そして首相官邸を「資本の東アジア共同体反対!」と心の中でつぶやきながら通り過ぎ、WEF会場になっている東京プリンスへ移動しました。キンコンさんはこの日の早朝に到着してそのまま国会議員会館に駆けつけたこともあり、非常に疲れていたので、僕らは彼女をホテルまで送っていき、申し入れには参加しませんでした(・・・って申し入れ、どうでした?)。

▼アジアのネットワークの交流を

夜、総評会館で、アジアの運動の意見交換会をおこない、キンコンさんもそこに合流、韓国、フィリピン、タイ、香港(ちょうど日本に来日していた香港の活動家で香港WTOではお世話になった方)そして日本のさまざまなセクターの方が参加し、今後のネットワークの必要性について討論しました。各国の運動のネットワークの情報を海外へ発信することの必要性などが提起されました。けっこうたくさんの重要な事柄が話されました。香港の反WTOの運動ネットワークの話も興味深く聞きました。WTOは今年いっぱいが勝負なので、日本でも宣伝ととりくみを強化する必要があるな、と個人的には思いました。(散漫な報告ですいません)

その後、アジアのネットワークのプレ交流を夜遅くまで行いました。みなさん1日ご苦労様でした。そして、17日の集会にはぜひご参加ください。16日夜には、京都(キンコンさん、ジョセフさん)、新潟(ジョンピルさん)集会も行われます。その報告ももしあれば嬉しいです。また肝心のWEFのほうがどうだったのかも分かれば報告をながします。

いながき

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