Monday, July 03, 2006

 

アジアのFTA何が問題か=6・16関西討論集会報告=

 必ずしも十分な準備時間がとれず、しかも平日夜の開催という悪条件でしたが、当日は老若男女70人ほどの参加者にお集まりいただき、現在の世界経済システムが抱える巨大な矛盾、また日本とアジア諸国との間で生じるであろう問題点について、当事者の貴重なお話を伺うことができました。当日のメモでお話の概要を紹介します。(文責は山口@地域・アソシエーション研究所)

(1)FTAがタイの小農民に与える影響について キンコン・ナリタラクさん

●タイの農業分野の概括
・日本がたどったのと同じように小農民の没落傾向が顕著
 人口6500万人の内、農業人口は500万世帯、2500万人(家族農業が中心)
 40年前は農業人口80%→現在は30%に
 減少の原因:①農業が輸出志向になり、商品作物栽培に転換したこと、②「緑の革命」の影響
  ①米、鶏、エビ、キャッサバ、サトウキビなど(政策的重点化、日本向け)、国際市場の影響
  ②生産性は上がったが、投入財にかかる資金も上昇、借金経営、資本力の多寡が勝負
 国土総面積5300万ha(森林など2100万ha、農地その他3200万ha)
 稲作用地450万ha(米生産量の60%が国内向け、40%が輸出)、政府は米の輸出を奨励
・この40~50年間、輸出量は増えても、農家所得は減少
 キャッサバ価格:00年~04年で25~35%下落
 米価:わずかに上昇するも、生産者価格と輸出市場価格の差は拡大の一方
  輸出市場価格に対して生産者価格は約半分
・政府の輸出奨励→生産は増大/農民所得は減少→少数の輸出・仲介業者に利益が集中
 米では3社、日本向け加工鶏では2社の寡占状態

●WTO、FTAの下での状況
・03年カンクン閣僚会議の失敗後、政府は急激にFTAを推進
 農産物市場の拡大、工業製品などのシェア確保が目的
 FTA交渉で行われているのは「小農民を犠牲にして通信産業を優遇する」ための交渉
・タイ‐中国FTA(03.10.1)→150品目で農業市場を開放(関税0%)
 以後、中国からタイへの野菜輸出は180%増大、果物輸出は140%増大
 中国から流入する低価格果物に合わせて、果物の国内市場価格総体が35~40%低下
 タイ料理に重要なニンニク、中国産はタイ産のおよそ半値以下→10万人の生産者が生産放棄
 政府の対応は「競争に勝てるように努力せよ」
・タイ‐豪州FTA(05.1.1)
 通信関連の電子部品、ドリアンやロンガンなど高級果物の輸出増との事前予想
 →実際には、衛生基準の違いなどで果物輸出は伸びず(輸出の権利を獲得した企業のみ儲かる)
 この代償として、豪州側は牛乳・酪農製品を輸出
 →10年間で関税全廃の約束→タイ政府は国内の酪農業者に「10年間でどうにかせい」
 豪州の牛乳の生産コストはタイの約半分→競争にもならない→約15万人の酪農業者、今後失業は必至
・FTAの影響
 タイの小農民は40年前から崩壊傾向にあったが、FTA以前と比べFTAの方が崩壊は急速
 農業だけで生活できる小農民はいまや皆無に近い

●農業と自由貿易
・タイ政府の農業政策=農業を3つのカテゴリーに分類
 ①輸出志向:米、鶏、キャッサバ、エビなど
 ②高付加価値:パーム油などの代替エネルギー、有機農産物(潜在的輸出志向)
 ③要調整品目:一般の野菜や果物
・「調整」とは何か=①効率性、価格による輸入産品との競争、②大企業導入による生産性向上
 「調整」され、切り捨てられるのが小農民型農業であることは明らか
・望ましい農業=①地域に根ざした、②安全で安心な、③生物の多様性を維持する~もの
 担い手は小農民→輸出志向型農業では不可能
・望ましい貿易=平等で有用性に基づくもの←→独占的な、偏った貿易(自由貿易至上主義)

(2)WTOとFTAの補完性について ジョゼフ・プルガナンさん 

●WTOの諸問題―発展(開発)とは何か
・設立10年にあたり、WTO は報告書(04年)で「世界貿易は7兆㌦に拡大した」と自賛
 →一方、世界ではホームレスや貧困層の増大が問題に→貿易の拡大と貧困の拡大が同時進行
 →「豊かになる」とは? 貿易が問題を解決するのか? 誰にとっての利益なのか?
・フィリピンのWTO加盟(95年)
 政府の主張「50万人の雇用増を実現。農業の付加価値も増える」
 実際に生じたのは民衆生活の低下、失業増、農業の崩壊
 →利益はどこへ行ったのか?→多国籍企業、アグリビジネスに集中
・貿易交渉で守勢にあるフィリピン、その背景
 20年間の開発戦略=新自由主義 
 マルコス政権下で関税上限を100%に切り下げ(アジアNIEsは保護主義戦略)
 世界銀行、IMFによる構造調整政策→関税削減を強要
 →WTO加盟以前からWTOの低関税政策を先取り(関税対象品目の90%が関税率0~30%)
・こうした中で01年のドーハ・ラウンドを迎える
 ウルグアイ・ラウンドの結果で打撃を受けたにもかかわらず、政府は「開発ラウンド」との主張に期待
 貿易の公平な分配という建て前と裏腹に、実際は米・EU・日など大国の主張が貫徹
 →「開発ラウンド」=「市場アクセス(参入)ラウンド」(先進国は現状維持、途上国は開放)
・香港閣僚会議(05年) さらなる関税削減を招来(農産品、現行関税率30%→20%に)
 フィリピンの農産物関税率 WTO公式レート40%、実際には7%→台湾やタイなどからの農産物流入
 工業製品の関税削減、おおむね5~6割 先進国から工業製品流入→事実上「生産するな」と言うに等しい
 サービス部門の生産は現在GDPの40%
 →市場開放によって、水道、教育、エネルギー、鉄道、通信など20分野に外資の流入必至
・WTOは現に存在するフィリピンの貧困を増大させこそすれ、減少させることはない

●WTOとFTAの関係
・香港閣僚会議で途上国が決裂に追い込めなかった理由
 決裂→FTA 2国間協定へのシフト→国家間の力量が直接反映→途上国はさらなる悪条件
・選択肢の問題
 先進国=WTOでもFTAでも都合によって使い分け可能
 途上国=WTOかFTAか、どちらかの選択を強要されざるを得ない
 「WTOとFTAは相互補完的な新自由主義の道具として機能」 フィリピンにおけるFTA反対論の主張

●日比FTAの問題
・日本側 農産品、労働市場の開放に対して、比の工業製品の関税率削減(20%→0%)を要求
 →フィリピン民衆 歓迎(国内に仕事がないため)、受け入れ人数の少なさ(年200人)に不満
 →看護士はすでに米国に1万人、英国に5000人流出
 →フィリピン国内では、すでに2万人が海外を目的とした看護教育を受けている
・需要と供給の問題なのか?
 日本側「看護士、介護士が足らない」と主張→足りない分を補えば、当然フィリピンでも不足する
 日本看護協会「問題解決にならない」と反対
 日本での人材確保が先決
・フィリピンからすれば、対等な立場での人の移動ではない
 このような構造の中で、どのような発展も不可能

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