Sunday, February 05, 2006

 

デボラ・ジェームズの「香港WTOをどう見るか」

アメリカのグローバル・エクスチェンジによる香港WTOに関する評価です。
長文ですが、ご参考までに…。(ATTAC首都圏:清水政夫)

デボラ・ジェームズ CommonDreams.orgから2006年1月14日公表

 先週、世界貿易機関(WTO)に対する香港12月抗議行動で、最後の拘束者14人のうち11人は、無罪と裁決された。3人の韓国人は、不法集会参加という理由でまだ裁判にかけられるている。

 千人を超える人々が第6回閣僚会議期間中、香港で拘束されたが、2003年メキシコ・カンクンまたは1999年シアトルにおける大規模な抗議行動では数百人が拘束され、今回は拘束者の数がはるかに多かった。それらのWTO閣僚会議期間と同様に、労働者、農民、環境保護団体、学生、健康医療活動家、その他の人権擁護団体は、この機関に対する強い反対を明らかにするため、韓国、米国、ケニヤ、ブラジル、フィリピン、フランス、南アフリカ、インドネシアなど広範囲に渡る国々から参加してきた。

 WTOは、1995年設立されて以来、首尾良く一ラウンドの交渉さえ終えることができていない。2001年に開始されたラウンドは、まだ半ばであるが、カタールの都市ドーハの名前でラウンドが名づけられ、その都市で開始された。「ドーハ・ラウンド」は昨年完了することになっていた、しかし、交渉者は自分たちがまだ一般的なパラメータまたは「モダリティ」さえ終わっていないことを認めざるを得ない。2003年カンクンで失敗したように、抗議者は交渉が破局することを望む一方で、当初、香港でのWTOのゴールは「モダリティ」を完了することになっていた。

 残念なことに香港では、宣言は最終的には署名されたが、WTO擁護者は、この宣言がこのラウンドを終えるにはほど遠い内容だと認めた。一方で、宣言は、発展途上国から数多くの厳しい譲歩(それは途上国の将来の発展に深刻な影響をもたらす)を命令した。そして、企業グローバリゼーションの全てのモデルが深刻な合法性の危機を経験しているとき、その合意は、WTO交渉をこれからもよろよろと進み続けさせる。(参照:ttp://www.alternet.org/story/29326/)

 しかし、最終的な合意は、遠く離れた長い道のりにある。そして、成長と開発の促進の失敗によって、企業グローバリゼーションの全てのモデルの信頼性が腐食し続けていおり、それはまだ止めることができる。

◆香港での地政学的変動

 反WTO専門家のウォールデン・ベローによると、交渉者が最終的な宣言を得ることができた理由は、ブラジルとインド(カンクンで発展途上国を抵抗をWTOに対する抵抗へ導いた国だが)が、今回は、彼ら自国の企業利益のためにWTO体制の擁護者になって、他の発展途上国に対して基本的に米国とEUの政策に従うよう圧力をかけることで大きい役割を果たした。

 より小さな発展途上国は、この交渉の間、実際に巨大な抵抗と連合設立の努力を示した。心に留めてほしい、約30ヵ国の発展途上国は、ジュネーブにおいて常駐スタッフを置く資金さえないが、そこでWTO交渉が進行するので、いかに自国に交渉が影響を及ぼすのかを知るということでさえ、この途上国を苦しめてしまうのだ。
110ヵ国の巨大なグループは、立場を調整するために香港で会合したが、そのことにおいて、多分WTOの歴史の上で発展途上国の最大の会議であろう。

 一瞬、発展途上国の団結が、自分たちの利益に対して強い姿勢を保ち、差し迫った合意を失敗させるかもしれないように見えた。しかし終結において、ベローによれば、「ブラジルとインドの役割は、アンバランスな合意に、発展途上国の同意を引き出すことだった」。米国とEUの「分断と征服」戦略は効いたようだ ― 今のところ。

 しかし、香港はまた、発展途上国における新しいリーダーの刺激的な出現で有名となった。ブッシュ政権と自国の企業セクターからの圧力に抵抗し、その代わりに世界中で発展途上国との戦略的同盟結成に取り組むことで最もふさわしい国、ベネズエラである。

◆恐れを知らない大臣の物語

 2005年12月18日香港での閣僚会議閉会式は、マイクも名前カードもない劇場スタイルの部屋で開かれた。それは、WTOの150加盟国の代表の、どの様な参加も排除するように設計されたようだった。

 閉会式議長、ジョン・ツアン香港通商長官は、議題を一挙に突きすすんだ。「次の事項、閣僚宣言の承認は、皆さん賛成しますか?」、彼はすぐに小槌を打ち叩いた。「それでは、採択されました。」

 しかし突然、マリー・ピリ・エルナンデス(ベネズエラの副外務大臣)は、ステージの上に跳び上って、話す権利を要求した。議長は、彼女をなだめようと、以前の(非公式で、記録されない)会議の間に作成された声明は、「適切に検討されている」と観客に保証した。しかし、それは決心したエルナンデスさんを納得させなかった。そして、彼女は押し進み、最終的な宣言について自国政府の批評を公式に口に出す決心だった。そして彼女は、自らが望んだものを得た。

 彼女は、工業の生産品にかかる関税と同様にサービス交渉の両方の問題(下記参照)に異議を上げた。
そして、キューバの代表も、同じようにするために立ち上がった。いかなる国でも宣言テキストについて保留するために、最後の本会議で話したことは、WTOの歴史の中で最初であった。交渉がジュネーブで継続されるので、正式な「保留」の規則的関連は、将来の論争において決定されるだろう。

 しかし、教訓は明白だった。ベネズエラが、米州自由貿易地域協定に対する半球状の闘いにおいてリーダーになったちょうどその時、同国は企業グローバリゼーションに対する闘いでもリーダーになった。

◆それでは、各国政府は一体何に同意したのか?

 交渉者は、香港会議の終りまでに、WTO用語での「モダリティ」と呼ばれる交渉の枠組みを完成させるつもりでいたが、会議間近に、彼らの目標をきわめて低くした。しかし、彼らは幾つかのものには同意し、それらのほぼすべては、開発と民主主義にとって破滅を意味するものだった。

 ・サービスに関する交渉の方法論の大きな拡張は、シティコープとハリバートンなどの多国籍企業に、発展途上国の財政的利点であるエネルギー・セクターを手渡すように圧力をかけ、貧しい者のための公共サービスへのアクセスを止める、新しい方法を与える。

 ・農業におけるヨーロッパの輸出補助金の2013年という終結日は、その代わりに実際には、巨額な補助金の大部分を米国とEUに残した。

 ・工業の関税(NAMA)に関する、先進国の多数派の合同提案は、多くの貧困国が工業化の基礎的開発を永久に妨害する極端なフォーミュラ(方式)に基づいている。

 ・いわゆる開発パッケージは、綿花に関する補助金、後発開発途上国(LDC)のための市場参入、開発援助といった重要な問題で、本当の解決の動きがほとんどないものである。

◆サービス

 交渉の週間における企業利益のための最大のクーデターは、外国の多国籍企業が、公共で国有化されたサービスを買い占めることを認めるよう、各国に圧力をかける真新しい方法を可能とした。サービスの「自由化」は、健康管理、教育、郵便制度といった基本的な人間の必需品に応えられるように公的に所有されているサービスの民営化を伴う。そして、電気送電、テレコミュニケーション、輸送のような公有・私有両者の混合型か民営化されているサービスでは、規制の撤廃を伴う。

 国内経済の管理において、政府の役割を減少させ民間部門の役割を増やすために、国際通貨基金(IMF)や世界銀行によって命令された、いわゆる「構造調整」プログラムが原因で、世界中の多くの発展途上国は、すでに自国のサービス部門を大きく自由化している。

 WTOにおける自由化は、私たちの日々の暮らしの活動において、外国の多国籍資本の支配を深め、広げ、そして、その外国資本の支配を永続化させるだろう。

 発展途上国は、自分たちがどのサービス部門に外国産購入への市場開放を許可するか、その管理権と柔軟性を持てるという根拠だけで、そして豊かな国を農業に関する交渉に獲得するための譲歩として、サービス問題(彼らには得るものほぼ何もない議題)に関して、交渉することをもともとは同意したに過ぎない。香港での最大の変更は、グループ国での交渉と分野別交渉に同意する発展途上国を獲得した多国籍サービス企業による巨大な力の強奪であった、そして、途上国の多様な国益を保護する力には、ひどい損害を与えた。

 ジュネーブにおいて、これからの数ヶ月間、私たちは「サービス部門へ対外投資を引きつける利益」について発展途上国の交渉団と話し合うために、「サービスの友」会議を主催する先進国から来る通商代表たちに出会うだろう。実際は、これらのミーティングは、小国の政府を脅して、国営企業と同等の条件を外国籍企業に認めさせるために、多国籍サービス企業によって主催されるだろう。

 グローバルな政治的支配に関する米国のための2つの最大のセクターは、金融サービス、それは世界の資金支配するためにシティコープと他の金融業界によって支持され、そしてもう一つのセクターのエネルギー・サービス、それは世界の石油とガスを支配するために、ハリバートンなどの企業によって支持される。さらに、健康管理、教育、水供給、郵便業務を含む重要な公共サービスは、自由化リストに載っている。

 しかし、優先的自由化部門のリストは、そこで止まらない。それは、以下のものも含む。法的サービス、コンピュータと関連したサービス、建設と関連した工学、テレコミュニケーショ、視聴覚サービス、流通、環境保護事業、観光事業、海運、航空その他の輸送サービス、倉庫・ロジスティックス業。そして、どんな場合にも対応可能な素晴らしいカテゴリーは、「他の専門的な業務」と呼ばれる。サービスが世界経済の最速の成長するセクターであり、私たちがWTOを止めない限り、それは企業支配下にしっかりと置かれてしまう。

◆農業

 米国と欧州連合は、自国の農業部門に巨額の補助金を支給するが、その補助金は多くの発展途上国にとって、世界市場での自国産品に不公平なメリットを与え、世界的な価格を下げ、世界的に共同体農業をめちゃくちゃにするものだ。

 ブラジルとアルゼンチンなどの農業の輸出国は、2010年までに米国、EUの輸出補助金を削減させるために戦っていた、そして、ブラジルやアルゼンチンの大豆、柑橘類、砂糖、牛肉は、米国やヨーロッパの市場において、公平な競争の場で売られることができるかもしれない。第三世界ネットワークのマーティン・コーによれば、「この巨大に貿易を歪曲している補助金のすべては、何年も前に削除されなければならなかった、そして、農産品価格は、その補助金額を上乗せして請求してはいなかった。」

 米国は、農業で重要な譲歩を行う国であるように演出し(彼らの譲歩が、実際より、文書上で多くあるだけのようだが)、国内補助金の未解決の責任をヨーロッパの国々に転嫁しようとした。期日までにその巨大な輸出補助金を減らすというEUの意志の不足のために、閣僚会議は決裂するところだった。しかし、最後の時間で、EUが譲ったものと同じくらい多くのものをEUは引き出して、EU通商委員ピーター・マンデルソンは、輸出補助金削減のために2013年という目標日に同意した。しかし、非常により大きな国内補助金の未解決の問題を残したままである。

 米国、EUに対する抵抗によって、カンクンで私たちをうならせた農業輸出発展途上国を代表したグループG20は、自分たちが非難される失敗した閣僚会議になるよりはむしろ、譲歩することにした。そして、彼らは他の貧困国に合意に賛成するように圧力をかけるのを手伝った。

 しかし、大部分の発展途上国は、正真の食料輸入国であって、他の国の市場に接近することより、補助金を支給された外国の輸入品から自国農民の基盤を保護することについて関心を抱いている。これらの国は、食糧安全保障、生計維持、地方開発のために、食料品目に特定の規制をかけることを許される特別産品(SP)と呼ばれる措置に関して主張してきた。

 草案宣言において、先進諸国はどの種類の製品を保護するべきかについて決定することができた(重要品目)。しかし、発展途上国は、多くの制約を設けさせられながら、WTOが途上国にその決定を下すのを認めなければならないところだった。途上国は香港で、ついに特別産品の「自国指定」の権利を得た。しかし、産品の「適当な数」だけが指定に見込まれ、これはとても漠然としている ― それは、ジュネー
ブでの将来の交渉で決定される。バンダナ・シバが指摘するように、農民の暮らしと食糧安全保障に関してということであれば、「我らが農民のすべての産品は、特別産品である」。

 これは、複雑な、取るに足らない些細なことかもしれない。しかし、韓国や他の国の農民たちが、WTOに抗議するために自殺しているときに、そして、大部分の発展途上国では住民の半分以上が農民に相当するとき、それはかなりの問題である。

 最貧困である発展途上国の重要なもう一つの問題は、綿花である。農業企業体生産者への米国の綿花補助金は、ブルキナ・ファソ、マリ、ベナン、チャドの何百万もの農民が、人為的に安い価格のために、何億ドルもの収入を損失するように、市場をあまりにゆがめてきた。彼らは要求し、2006年までに米国の輸出補助金は終了する。彼らは、米国が「一般的に適用できるより、短い期間にわたって」その輸出補助金を減らすという漠然とした約束を得た。しかし、農民が自分たちの毎日の暮らしにとって損するような問題に関して、それはパンくず以外の何物でもない。

◆仕事と環境

 WTO用語で、この交渉テーマは、非農業市場アクセスまたはNAMAと呼ばれている。NAMA交渉は、関税や企業が政府に支払う税金(それによって、これら企業が相手国で製品を売るのを許される)を削減することを意図している。それで、NAMAは、大規模製造産品と天然資源(すなわち、サービスや農産品ではない)において、巨大な企業税金廃止計画である。

 関税は、いかなる発展途上国にとっても開発の重要なツールである。それは、次のように働く。あなたは自動車産業を手にしたい、しかし、日本人は車をよりよく、より安く、より能率的に作ってしまう。それで、あなたの国内自動車産業が競争できるようになるまで、輸入車をより高価にするため、関税(それは本質的に企業への税金である)を日本車に掛けた。それから、成長している産業があるときも、あなたは関税を上げ、消費者価格は下げさせる。次の年、テレビや家電製品、あるいは、あなたの国の開発計画において、仕事を創出し、経済を拡大するものには、何にでも関税を掛ける。それこそ、先進諸国が低い関税である一方(そして、その代わりに産業界をサポートする方法として、補助金を使うが)、発展途上国が一般により高い関税を維持している理由である。

 あらゆる先進国は、その工業化過程に重要な方策として、関税という道具を使用してきた。

ところが現在、先進諸国は、発展途上国が劇的に彼らの関税を減らすように迫っている。そして、途上国が開発のはしごを登ったあとに、本質的にははしごを蹴り倒すのだ。

 WTOにおいて、いろいろな国が、年間を通して相異なる提案をし、それから交渉団は協定を結ぼうとする。巧妙な部分は、先進諸国(そして、彼らの立場を支配する企業)によいことが、しばしば発展途上国(その国益は、国営企業または自国の開発ニーズによって決定されるかもしれない)によくないということである。

 以下のように、NAMAにおいては、米国、EU、カナダ、ノルウェーは、昨年3月、発展途上国の関税の極端な削減を要求する提案を行った。アルゼンチン、ブラジル、インドは、6月に妥協提案をした。7月に、カリブ海諸国は新しいもう一つの提案行ったが、それは、いつ貧困国の関税を減らすべきかについて貧困国側が決めるという、より多くの政策能力を貧困国が持つことを許されるものだった。そして、90ヵ国の発展途上国のグループは、ドーハ宣言において開発の中心的なWTO命令を繰り返すいくつかの提案をした。

 どの国の提案が香港テキストに反映されたか、あなたは推測できるかもしれない。もし、EU、USと他の先進諸国を推測するならば、あなたは正しいだろう。発展途上国において関税を下げることは、生産を最も低い賃金の国の方へ移動することを期待している多国籍企業にとってよいが、開発または労働者の利益にはそれほどよくない。

 その上、森林と漁場に関して、香港で合意された急激な関税削減は、木材と魚類の世界的な乱開拓・乱獲の劇的な増加を意味する。アフリカ貿易ネットワークによると、香港の結果は「地場産業の崩壊、脱工業化、大規模な雇用喪失を招く」。第三世界ネットワークのコーは「発展途上国から引き出されたNAMAの義務は、多国間貿易体制の歴史において前例がないものだ」と指摘した。

◆開発、空虚なパッケージ

 閣僚会議の何日か前、米国のおよびEU当局は、交渉にあげた新しい「開発パッケージ」を騒々しく宣伝をしたが、それは基本的により貧困国に他の交渉を受け入れさせる現金賄賂でしかない。
このパッケージの基礎は、開発援助(資金繰りが苦しい小規模経済のために抵抗するのが難しい)で、数十億ドルであった。

 しかし、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスによれば、パッケージに含まれた「援助」の大部分が、すでに約束されたものか、それはローン(補助金でない)の形態である。そして、そのほとんどは「貿易促進」と呼ばれるものに実際に向けられる。それは、途上国がWTO協定に従うために自国の法律を書き直すのを手助けする資金でしかない。

 ローリ・ワーロック(パブリック・シチズンの全世界貿易モニターの代表)は、「実際、香港閣僚会議宣言文を慎重に読むと、ドーハ課題の中心にある開発についての宣伝の日にもかかわらず、関連したパラグラフ38は、文字通り、1994年WTO協定原文からの言葉の『カット・アンド・ペースト』であることが明らかである!」ことに注目した。10年のWTOの交渉の後、発展途上国は莫大な譲歩を与えたが、そのお返しに、彼らはWTO憲章協定の言い換えを得ただけだった。

 これは、ずいぶん昔に廃止されなければならなかった輸出補助金を撤廃する2013年という目標日のために、途上国は、工業化の未来とサービスの民営化を輸入するよう圧力をかけられたことを意味し、将来の開発援助の約束のほとんどが、実際には、途上国の工業化の未来の売却と、サービス部門民営化に適応する国内経済のリストラに関してのみ、途上国を「援助」するよう計画されている。

 本質において、それは香港の結果であった。

◆内外の抗議行動

 こういった締め付け、圧力、取引が交渉の内側で起こっている間、外部のデモンストレーションや行動も毎日起こっていた。

 12月11日に、来たる週間のプレビューで、香港民衆アライアンスによって組織された何千もの香港市民が、「移住者は、売りものではない」「WTOは、タイの農民の死を意味する」、そして、「ダウン(負けろ)、ダウン、WTO!」といった標識をかかげ、銅鑼湾に沿って行進した。外国の反WTO抗議者の恐怖を教え込ませるように計画された国内メディア・キャンペーンにもかかわらず、インドネシア移住者労働組合、フィリピン家事ヘルパー一般組合、香港労働組合連合のようなグループが、多彩で楽しい行進のために何千人もの行進者の動員を一層組織した。

 正にその2日後、WTO事務局長パスカル・ラミーの開会のあいさつの最中で、世界的な「私たちの世界は売り物ではないネットワーク」に連携された何十もの人々は、10の異なる言語による「合意しない方が、悪い合意よりいい」と読める巨大なオレンジ色の旗を身に着けながら、飛び上がり「ウソはたくさんだ、ラミー!」と繰り返し叫んだ。

 この初日には、また、およそ100人の韓国漁民の一団が凍てつく香港湾に飛び込み、水産業に関するWTO交渉で、巨大な規模の企業漁業に有利になり、家族漁民は破滅するというメッセージを波に揺られながら上下に動かしていた。

 ボリビア、カナダ、フィリピン、ウルグアイ、その他の国の人々は、中心となる会場ロビーにおいて巨大な「WTOは水から手を引け」と書かれたバナーを広げた。同じ名前の国際的なキャンペーンを開始している記者会見で、アフリカの取引ネットワークのゲケ・タニォは、私企業がどのようにガーナで何百人もの人々を殺したコレラ流行の間、飲料水サービスを減らし続けたかを明らかにした。

 断然、抗議週間の抗議行動のスターは、韓国の農民と労働組合員であった。大部分は衣装一式を揃え、そして、戦闘的な規律で、毎日異なった、カラフルで、力強い行動を組織した。例えば、彼らは類似した長いローブを着て扮装し、三歩歩いて、跪きお辞儀し祈って、立ち上がって、また三歩歩いて、お辞儀し祈って、これを1,000回以上繰り返した日もあった。すべての国内メディア中で、過度に宣伝された何百人もの暴力的な韓国人のイメージは突然、深い悲しみの魅力的な類形と人生への敬意に変わった。そして、貿易官僚に対して、これら農民の将来を消し去るような交渉はしないように嘆願した。

 しかし、毎日の平和的抗議行動の後に、韓国人は抗議週間の後半には行動を強化するしかないと約束した。
12月17日、「新自由主義とグローバリゼーションに反対する韓国民衆行動」の農民と労働者は、警察バリケードに対し身をもって押し迫り、閣僚会議場の数百フィート範囲内までうまく到達した。

 ちょうど数時間、警察官とともにコンベンション・センターの外側に離れて立っていた後、最終的に2、3ダースの人々がまんまとバリケードを突破し、コンベンション・センターのドアの方へ急発進した。突然、ムードは変わった。
警察棒は、武器を持たない抗議者に対する支配力を素早く再び断言した。何百人もの人々は叩かれ、世界中から来た1000人以上の人々は、平和裏に交差点に立つ間、催涙ガスを浴びた。結局、この1,000人以上の人々は、この抗議週間の期間中(そのほとんどはこの日の真夜中に)拘束されていた。WTO交渉が妥結したあと、14人以外のすべての人は解放された。そして、これを書いている現在、まだ3人は起訴されている。

◆グローバル化の影響:中国、移住者、農民

 香港で閣僚会議を開催することが、「自由貿易」の利益を強調するつもりであったならば、それとはまったく正反対のことを達成した。香港民衆アライアンス、「私たちの世界は売り物ではないネットワーク」、その他の個別グループは、あり余る程の教育的イベントとワークショップを組織した。それらは、WTO政策の影響(特に中国の増大する重要性やアジア太平洋地域の中の移住労働者問題、農民問題に焦点を当てたもの)の証言をするように計画されていた。

 グローバリゼーション関する国際フォーラム(IFG)は、www.ifg.orgで参照できる中国におけるグローバリゼーションに関する新しいレポートを開始した。中国が世界経済の中でますます重要なプレーヤーになっているので、中国の労働者との同盟をどのように築くか、人種差別的な中国非難に訴えることなく、よりバランスのよい貿易システムをどう創出するかということに、分析を発展させることは決定的である。グローバリゼーション・モニターと香港のアジア・モニター・リソース・センターの専門家は、中国経済と労働者におけるグローバル化とWTOの影響の分析を提示した。

 アジア移住者調整機関のフィリピン、インドネシア、ネパール、米国、その他の加盟グループは、証言の日と移住労働者におけるグローバル化の影響に関するワークショップを開催した。そして、食料主権に関するアジア太平洋ネットワークと全世界の農民ネットワーク、ヴィア・カンペシーナは、世界中で農民に加えられてきたWTO政策の破滅的影響を目に見えるようにするワークショップ、行進、行動を組織した。

◆代替モデルを開発すること

 WTO支持戦略の重要な部分は、巨大な象のラッシュを引き起こし、もし空が落ちたら、すべての貿易は途絶え、もしドーハ・ラウンドが結論に達しないならば、私たちはみな暗黒時代へと突き落されると、加盟国を脅かしてきた。

 しかし、これはまさに、WTOの存在の恒久化を謀るためのWTOの主要な神話のうちのひとつである。それは、WTO以外に貿易を統括する代替案がないという誤りである。実際、人間の社会は、1995年にWTOが出現する前に6百万年間機能してきている。活動家たちが求めているように、WTOがその進路上で停止し、解体されるとしても、世界貿易はまだ続き、世界の成長、開発、民主主義は、ずっと息づく空間を与えられているだろう。

 これこそ、活動家たちが香港の公開の教育イベントで行ったように、WTOに対する代替案が、私たちの運動において中心ステージを占める必要がある理由である。これらの代替案の多くは、IFGによって、そのウェブサイトで参照可能な「経済グローバリゼーションへの代替案:もう一つの世界は可能だ」と題された本で概説されている。

 地域の統合への代替的革新が想像力を惹きつけている地域の一つは、来る世界社会フォーラムがベネズエラで、この1月25日-29日開催されるラテンアメリカである。(参照:http://www.commondreams.org/views05/1004-22.htm)

◆香港からの教訓

 交渉と抗議行動の物語は、香港の意味について、ある教訓を明らかにする。第一に、アメリカ合衆国と欧州連合は、WTOに埋め込まれている企業グローバリゼーションの現在のモデルを維持することに、あまりに投資しているので、「失敗」を防ぎ、宣言への署名を得るためには、何でもする気があった。香港会議が、もう一つの「失敗した」閣僚会議(アルゼンチンにおける米州サミット)のすぐ後にあったことを思い起こすのは重要である。そこでは、米州自由貿易地域協定の方向に、出遅れた交渉を再開始しようとしたブッシュの目論見は失敗していた。

 第二に、発展途上国の連合は、苦心して創られているが、それは、米国とEUからのいじめと圧力によって、絶え間のない危機の中にある。ボリビア、ブラジルからケニヤ、ジンバブエ、そしてフィリピン、インドネシアに至る各国内での発展途上国活動家は、自国政府が巨大な大衆の利益を代表し、エリートの企業利益に農民や労働者を売り払わないように要求するため強い国内運動を構築している。

 まだ、100+の発展途上国メンバーの利益は、信じられないほど多様であり、地域、言語、文化、政治的方向性を越えた連合は、結成することは難しく、維持するのは、さらなる挑戦が求められている。
それは、WTOにおいて米国とEUに敢然と立ち向かい、自国の主権を外国企業の乗っ取りから守るために、他の闘争舞台で政治的なコストを払う気がある本当の発展途上国のリーダーシップが必要である。
この世界にとって幸いにも、ベネズエラはその役割に足を踏み入れた。現在、米国政府がベネズエラの主権を損なう試みに成功していない点を確実にさせる活動に、私たちは取り組まなければならない。そうすることで、私たちは交渉テーブルにおいて、ベネズエラを期待し続けることができる。

 第三に、交渉外部での社会運動の圧力は、内側での社会運動の圧力と結合するとき、膨大な役割を演ずることができる。草の根のおよび政策的組織者が外側と内側で一緒に集まり、そして、説明可能な政治的な展望から交渉テーブルに何があるか、等に基づく戦略的なキャンペーンを展開するとき、社会運動は交渉内の力のバランスを傾けることに、本当の影響を持つことができる。

 そして、第四に、米国とEUの政府に対し、説明可能性を維持させる活動は、交渉を失敗させる鍵である。シアトルの後6年、WTOと戦う力強い大衆運動が米国にないことは、米国外の活動家にとってさらに衝撃的である。
最も重要な任務のうちの1つは、中央アメリカ自由貿易協定に関する議会投票において、選ばれた代表が、企業貿易政策に依拠しているか否かという点で、最も最近のリトマス試験となるが、それに基づいて、今年11月、個々の議員に報いるか、罰するかを決断する市民の努力にある(例えば、働く家族に勝利をプロジェクト)。

◆次のステップ

 活動家が、ベネズエラにおける世界社会フォーラムに目を向けているとき、ダボスでの世界経済フォーラムに世界的経済エリートは集っている。このフォーラムはすでに、招待者だけのWTO会議である次の「ミニ閣僚」ための発射台と確認されている。

 ファスト・トラックが翌年2007年7月期限切れになる前に、協定が議会の承認に間に合って完了することができるように、今年末までにすべての専門的な交渉事項を満たすのと同様に、交渉者は現在、枠組みと「モダリティ」両方において、結論を下すために数ヵ月残すだけである。

 それは、グローバルな経済の将来にとって、来る数ヵ月が重要な期間であることを意味する。それは、WTO設立から最初の交渉ラウンドが、企業ルールを拡張、強化して終わるのか、うまく失敗するのかどうかを決定するだろう。
それが後者であるよう、皆で確実にしよう。

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デボラ・ジェームズは、1999年シアトル、2003年カンクン、2005年香港での、各WTO閣僚会議への反対行動に触媒的活動を及ぼした国際的人権組織、グローバル・エクスチェンジのグローバル経済担当理事である。彼女には、deborah@globalexchange.org で連絡できる。

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